コブシ中のサリシホリンの分布可視化

コブシ中のサリシホリンの分布可視化

W. Okumura, D. Aoki, Y. Matsushita, M. Yoshida, and K. Fukushima
Distribution of salicifoline in freeze-fixed stem of Magnolia kobus as observed by cryo-TOF-SIMS
Scientific Reports, 7, Article number: 5939 (2017)
DOI: 10.1038/s41598-017-06444-0

多くの植物は“アルカロイド”と呼ばれる含窒素化合物が含まれています。
アルカロイドが植物中でどのような役割を有しており、                              
どのように分布しているのか、その詳細には不明な点が多く残されています。
特に多くのアルカロイドは微量成分であるため、顕微スケールでの分布評価は困難でした。
本研究ではコブシ(Magnolia kobus)中に含まれる4級アンモニウム型アルカロイドの
サリシホリンという化合物に焦点を当て、そのコブシ樹幹内での分布を可視化しました。

用いた分析法である二次イオン質量分析は、試料表面に金属イオンビームを照射し、
そこからはじき出された化合物のうち、イオン化したものを分析します。
一般的な有機化合物は、はじき飛ばしただけではほとんどイオン化しないため、
あまり感度が高くないのですが、サリシホリンは常にイオン性を持つ化合物であるため、
非常に高感度に検出することができました。

得られた結果より、サリシホリンは樹皮では生きている組織にあり、
木部では木化の段階に応じて特徴的な分布を示すことがわかりました。
これらの分布情報を活かし、植物内でアルカロイドの果たす役割解明が期待されます。