化学成分の2D/3D分布可視化

当ラボでは【二次イオン質量分析】を用いて、様々な化学成分の分布状態を評価しています。
このページではこの装置、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometer)について紹介します。

SIMSとは、試料表面にAu+などの一次イオンを照射し、
試料最表面(数nm)から放出される二次イオンを検出する表面分析法です。
このとき得られる二次イオンは、質量が1から数千まで様々なものがあり、
表面に存在する物質固有のマススペクトルが得られます。
さらに、どこに金イオンを当てるか、をコントロールすることにより、
【どこから何のイオンが飛んできたのか】を調べることが出来ます。

TOF-SIMSによるケミカルマッピング
図1 飛行時間型(TOF-)SIMSによるケミカルマッピングの概要

これにより、特に不均一な構造をしている様々な材料や生物試料について、
【この化合物はどういう機能があるのか】というこれまでの知見に加えて
【この化合物はどこにあるのか、なぜそこにあるのか】という考察が出来るようになります。
さらに電子顕微鏡(SEM)で同じ場所を観察すれば、その組織の詳細な構造を確認できます。
当ラボではこのようにTOF-SIMSとSEMを組み合わせて様々な研究を行っています。


さて、質量分析は一般的に高真空下で行う必要があり、試料を乾燥させる必要がありました。
水溶性の化合物などは試料の乾燥時に大きく移動してしまうため、
本来の状態を評価するためには、試料を凍結させたまま分析を行う必要があります。
しかしながら表面数nmのみを分析するTOF-SIMSにおいては、次のような課題がありました。
・高真空下でも氷が昇華しない程度まで試料を冷やし続けること(-130℃以下)
・試料表面はクリーン&平滑であること
・測定される試料表面には霜がついてはいけない

これらを解決した上で、さらに凍らせたままの電子顕微鏡観察が出来れば、
水溶性成分の局在評価について、非常に強力な分析手法と成り得ます。
そこで当ラボでは試料の表面処理を行うためのグローブボックス、
低温(cryo-)TOF-SIMS、そしてcryo-SEMを連続的に実行できるシステムを開発しました。

cryo-TOF-SIMS/SEMシステム
図2 cryo-TOF-SIMS/SEMシステムによる凍結試料の分析・観察

表面分析と表面切削を繰り返すことで三次元的な評価も可能です。
当ラボでは本システムを用いて各種凍結試料の分析を試みています。