リグニン中のβ-1構造の組み合わせ定量評価

リグニン中のβ-1構造の組み合わせ定量評価

Y. Matsushita, S. Yagami, A. Kato, H. Mitsuda, D. Aoki, and K. Fukushima
Combinations of the Aromatic Rings in β‑1 Structure Formation of
Lignin Based on Quantitative Analysis by Thioacidolysis
J. Agric. Food Chem. DOI: 10.1021/acs.jafc.0c03206 (2020)
DOI: 10.1021/acs.jafc.0c03206

リグニンはモノリグノールと呼ばれる複数の単位構造が、
さまざまな結合様式によって連結した構造をしています。

各結合様式はその構造の違いによって
それ以上伸びない(反応性がない)、伸長しやすい、
分解しやすい、分析感度が良い/悪い、などの差異があり、
その量を知ることは、リグニンの特性・形成過程を理解する上で重要です。

しかしながらこれらの結合様式がどのような比率なのか、
その決定的な定量法は確立されていません。
本研究では「β-1結合」に着目し、その定量に取り組みました。

まず3種類のモノリグノールの組み合わせからできるβ-1構造について、
側鎖構造の変質を含めた12種類の化合物を合成し、
ガスクロマトグラフィー-質量分析測定における定量係数を評価しました。
さらに、7種類の樹種を用いて定量評価を行いました。

リグニン全体におけるモノリグノールの平均的な比率(計算予測値)と、
実際に得られたβ-1構造中のモノリグノール比率(実測値)を比較したところ、
被子植物あて材ではH核がほとんど検出されず、
裸子植物ではG-Gの組み合わせがかなり多めに検出されました。

この結果は、
・モノリグノール構造による反応性の違い
・リグニン形成段階中の化学的環境の変化
・モノリグノールの供給ペースが構造毎に異なる可能性
などを組み合わせて解釈する必要があります。
今後は顕微化学分析、定量生化学実験など、更なる検討を進める予定です。