クロマツ中のリグニン構造単位とその制御

N. Maeda, D. Aoki, S. Fujiyasu, Y. Matsushita, M. Yoshida, H. Hiraide, H. Mitsuda, Y. Tobimatsu, K. Fukushima
The distribution of monolignol glucosides coincides with lignification during the formation of compression wood in Pinus thunbergi
The Plant Journal DOI: 10.1111/tpj.17209 (2024)
DOI: 10.1111/tpj.17209

リグニンの前駆体であるモノリグノールは、
水溶性が低く、遊離フェノール性水酸基による反応性を有するため、
生体内での貯蔵・輸送が難しい構造をしています。
そのためか、グルコースが付加して安定化したモノリグノール配糖体、
という構造が植物中からよく見つかります。

リグニンは植物種や育成状況に応じてその構造を変化させます。
例えば裸子植物は通常、グアイアシル(G)単位だけからなりますが、
傾けて育つと、傾斜の下側にあて材と呼ばれる特殊な組織が形成され、
そのリグニン中にはp-ヒドロキシフェニル(H)単位があらわれます。
またG単位とH単位それぞれの配糖体があり、植物中から見つかります。

G単位とH単位は、植物中でどのぐらい、区別してコントロールされているのか。
リグニンの構造に、どのように取り込まれているのか、などの詳細には
不明な点が多く残されていました。

そこで本研究では、傾斜育成したクロマツ樹幹内において、
GおよびH単位のモノリグノール配糖体がどのように分布しているのか、
取り込まれた結果、どのようなリグニンが形成されているのか、
GおよびH単位は、リグニンを酸化・沈着させる酵素との反応性に違いがあるのか、
を調査しました。

結果より、クロマツ分化中木部に貯蔵されている
GおよびH単位のモノリグノール配糖体は、
仮道管細胞壁の形成・木化段階に応じた変化を示しましたが、
その変動には違いがありました。(図:下向きの山の形)
さらに、
リグニンへの取り込みタイミング(図:上向きの山の形)、
リグニン化学構造中での存在状態(H単位はより末端に存在)、
酸化・沈着挙動(G沈着が先行)、
において差異が確認できました。

よって、GおよびH単位がそれぞれ制御されることによって、
あて材特有のリグニンの構造が実現されているのではないか、と考えられます。

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