植物細胞壁の構造と機能
当ラボでは、植物細胞壁の構造と機能に関する研究を行っています。
特に結合様式が一意的に定まらない不定形高分子であるリグニンを対象として、
その生合成経路、目的に応じた構造制御、および量と分布状態の評価などに取り組んでいます。
木質バイオマスの特徴である二次木部は、様々なメカニズムによって形成されています。
二次木部の形成過程は多段階であり、各ステップにより必要とされる構造・機能が異なります。
図1 二次木部の形成と植物細胞壁の構造モデル(参考:木質の形成 第2版 p18, 88)
リグニンのモノマー構造は植物種、組織によっても異なりますが、
フェニルプロパン単位を基本とし、メトキシ基が0ー2個の3種類に分類することが出来ます。
これらの単位が様々な様式で結合し、高分子リグニンを形成しています。
上述したように各ステップにおいて必要される機能が異なるため、
リグニンの構造も形成時期によって異なっていることがわかっていますが、
その全容は明らかとなっていません。
図2 リグニンモノマーの構造と様々な結合様式による高分子リグニンのモデル構造
リグニンの機能として以下のようなものが挙げられます。
・細胞壁のセルロースミクロフィブリルを固着するマトリクスとして、力学特性に寄与する
・疎水性により細胞壁からの水の散逸を防ぐ
・病原菌等の侵入に際して生成し、物理的障壁となる
これ以外にも局所的なリグニン沈着によって制御されている植物機能がいくつか報告されており、
植物の代謝統御機構を研究する上で、重要な化合物であると言えます。