キハダ中におけるアルカロイドの分布

キハダ中におけるアルカロイドの分布

Q. Gong, D. Aoki, Y. Matsushita, M. Yoshida, T. Taniguchi, K. Endoh, K. Fukushima
Microscopic distribution of alkaloids in freeze-fixed stems of Phellodendron amurense
Frontiers in Plant Science, DOI:10.3389/fpls.2023.1203768 (2023)
DOI: 10.3389/fpls.2023.1203768

アルカロイドは植物成分の一種で、窒素を含む(主には塩基性の)有機化合物の総称です。
毒、薬として有名な化合物の多くがアルカロイドで、
例えばニコチン、モルヒネ、コカイン、カフェイン、パクリタキセル・・・
これらもアルカロイドです(アミノ酸は通常アルカロイドとは呼ばれません)

そんなアルカロイドを植物はどうして持っているのか。
あるいは植物内ではどのように管理しているのか。
「たぶん外敵への防御のために貯めている・・・」よりも詳しい説明は難しいのが現状です。
アルカロイドは微量なため、植物内のどこにあるのかすら、
詳しい情報は得られていないことが多いのです。

さてアジアで古くから知られる、薬になる木としてキハダ(Phellodendron amurense)があります。
樹皮を剥ぐとすごく黄色いのが名前の由来ですが、
この黄色い成分、実はアルカロイドで、胃薬として利用されてきました。

今回、キハダの若い木の師部ー形成層ー木部のどこに何のアルカロイドがあるのか、
細胞レベルでの可視化を行いました。また夏・秋での量の変化を調査しました。
キハダ内から8種類のアルカロイドを検出しましたが、
それらの分布は、思ったよりも違っており、一体どこで何をしているのか・・・?を
考えていくための、重要な情報になりそうです(まだわかってません)。

また、今回は質量分析によるイメージングを用いているため、
構造は一応違うけど質量が同じ・・・という化合物を個別に可視化することはできませんでした。
上の画像でフェロデンドリン+マグノフロリン、というのは分離できずにまとめて検出しています。
さて、分布の異なるこれらのアルカロイド、やっぱり役割は違うのでしょうか・・・

今後、これらの生合成経路的な相関関係、貯蔵・輸送のダイナミックな追跡が進めば、
キハダがこれらのアルカロイドをどういう目的で、どう運用しているのかがみえてくるかもしれません。