アジサイ青色色素錯体のダイレクトマッピング

アジサイ青色色素錯体のダイレクトマッピング

T. Ito, D. Aoki, K. Fukushima, K. Yoshida
Direct mapping of hydrangea blue-complex in sepal tissues of Hydrangea macrophylla
Scientific Reports, 9 Article number: 5450 (2019)
DOI: 10.1038/s41598-019-41968-7

名古屋大学プレスリリース(PDF)

アジサイを酸性土壌で育てると青色の花(実際にはガク片)を咲かせます。
土壌が酸性になると、土中のアルミニウムが水中に溶け出すことから、
この青色発色機構は、アルミニウムイオンに関連するものと考えられてきましたが、
詳細な発色メカニズムについては不明でした。

最近、名古屋大学 吉田久美 教授らの研究グループが
アントシアニン・アルミニウム・助色素から成る三成分錯体によって
アジサイの青色を(試験管内で)再現し、これを青色錯体分子として報告していました。
参考:DOI: 10.3390/molecules23061424

しかしながらその錯体分子が本当に生きているアジサイのガク片中に存在して、
花色を担っているかどうかについては証明されていませんでした。

本研究では、吉田久美 教授との共同研究により、
このアジサイの青色錯体分子(Hydrangia blue-complex)が
アジサイ中に本当に存在するのか、存在するとしたらどの細胞なのか、について
低温-飛行時間型二次イオン質量分析装置(cryo-TOF-SIMS)を用いた可視化を行いました。

まず合成された錯体色素を用いた実験より、
cryo-TOF-SIMSによってこの錯体を分子イオンとして検出可能なことを確認しました。
続いて凍結したアジサイガク片断面の分析より、
この錯体色素と同一の質量電荷比を持つ化合物が青色の細胞から検出されました。
またアルミニウムの分布もこの青色細胞と一致しました。
結果より、アジサイの青色を担う色素が
三成分から成るHydrangia blue-complexであることを示しました。