13CO2育成でイチョウのリグニン構造をNMR定量分析

13CO2育成でイチョウのリグニン構造をNMR定量分析

S. Miyata, D. Aoki, Y. Matsushita, M. Takeuchi and K. Fukushima
Evaluation of guaiacyl lignin aromatic structures using 13CO2 administered Ginkgo biloba L. xylem by quantitative solid- and liquid-state 13C NMR
Holzforschung, 2023, DOI: 10.1515/hf-2022-0141
https://doi.org/10.1515/hf-2022-0141

核磁気共鳴(NMR)は水素・炭素の状態を調べる重要な分析方法で、
液体あるいは固体の試料を測定することができ、化学構造解析に極めて重要です。
炭素NMRは情報量が多く、いろいろな構造を議論できるのですが、
1%だけ存在する13Cを検出することと、(残り99%が12C)
必要な分析時間が長いことから、定量的なデータを得るのは大変でした。

さて、植物細胞壁の主成分のひとつであるリグニンは、
NMR感度の低い芳香族構造を主体としています。
これを13C NMRで定量するために、本研究では13CO2で植物を育てました。

密閉容器の中で育てた結果、炭素の85%が13Cになったイチョウが得られました。
液体NMR、固体NMRで13Cの定量分析を行い、
そして細胞壁を“細かく砕いて溶かす”までに起こる化学変化について、議論しました。

リグニンの芳香族構造に関する結論は以下の通りです。
・液体、固体での分析結果は一致し、液体NMRでも固体全体を分析できている。
(細胞壁の一部の溶解性が悪くて検出できていないのではないか、という懸念を払拭した)
・細かく砕く過程(ボールミリング)で、水素と結合している芳香族炭素の割合が下がっている。
(従来報告されていた内容だが、比率の定量的分析は困難だった)