微量化学分析法による放射組織の研究

微量化学分析法による放射組織の研究

P. Zheng, D. Aoki, Y. Matsushita, S. Yagami, K. Fukushima
Lignification of ray parenchyma cells in the xylem of Pinus densiflora.
Part II: Microchemical analysis by laser microdissection and thioacidolysis
Holzforschung, DOI:10.1515/hf-2013-0232 (2014)
http://dx.doi.org/10.1515/hf-2013-0232

ウェットケミストリーとは、液体試薬を用いて実験・分析を行う手法のことであり、
特に検出・定量分析(NMR、HPLC等)において多大な実績があります。
しかしながら対象化合物を「溶かして」しまうこと、および
「液体として取り扱える程度の量が必要」であることから、
例えば「1つの細胞内にあるもの」を対象としてウェットな分析を行うのは非常に大変です。

植物には様々な組織がありますが、微細領域を個別かつウェットに分析するアプローチとして
「分析できる量になるまでがんばって集める」というものがあります。
本研究では木材全体に対しての含有量が小さい放射組織について、
その組成変化を検出する実験のためにレーザーナイフを利用(上写真)しました。
1回のチオアシドリシス反応(上写真右側)で約5000個の放射組織断片を使用します。

結果より、アカマツ(Pinus densiflora)の辺材から心材に至る過程において、
放射組織に含まれるリグニン量が増大していることを確認できました。