パルプ製造工程における洗浄剤の挙動解析

パルプ製造工程における洗浄剤の挙動解析

K. Tokugawa, D. Aoki, R. Asai, Y. Matsushita, M. Ishiguro, Y. Noda, K. Fukushima
Behavioural analysis of a nonionic detergent in the kraft pulp washing process using cryo-time-of-flight secondary ion mass spectrometry and cryo-scanning electron microscopy
J. Wood. Sci., DOI:10.1007/s10086-017-1618-3 (2017)
DOI:10.1007/s10086-017-1618-3

パルプ製造は木質バイオマスの主要な用途の1つです。
古くから様々な薬品がパルプの収率向上・紙の特性改善に利用されてきましたが、
不均一な液中でそれらの薬品がどのように働いているのかについて、
明らかになっていないことが多く残っています。

本実験ではパルプ洗浄工程で利用されているパルプ洗浄剤に着目しました。
洗浄剤の添加により、白色度が向上することがわかっていますが、
そのメカニズムは明らかにはなっていませんでした。
そこで洗浄剤添加によるパルプ成分・特性の変化を調査しました。
さらに凍結したパルプ懸濁液中における洗浄剤の分布を
低温・飛行時間型二次イオン質量分析/走査電子顕微鏡(cryo-TOF-SIMS/SEM)で分析しました。

結果より、洗浄剤添加によってパルプ中の残存リグニン量が減少し、
ろ水速度(水の抜けやすさ)が増大することが確認されました。
さらに添加された洗浄剤は、パルプ繊維の細胞壁断面から検出されました。
これらのことは、洗浄剤が繊維細胞壁に侵入しながら
繊維内外の溶液交換を促進していること、
そして効率的な洗浄に貢献していることを示唆しています。